中国当局は最近、北朝鮮から脱出した500人以上を強制送還しました。そのほとんどが女性で、強制労働キャンプに収容され、拷問、性暴力、強制失踪、処刑などの危険にさらされています。
北朝鮮と中国に幅広い人脈を持つ韓国の地下宣教師、スティーブン・キム(Stephen Kim)氏によると、10月9日の夜、中国政府は5つの国境地点から北朝鮮国民が車で送還されました。キム氏によると、拘束された人びとのなかには、中国側の警備員に韓国の親族に電話をかけてもらい、そのことをうまく伝えられた人もいたとのことです。
北朝鮮政府は2023年8月、新型コロナウイルス感染症のパンデミック以来封鎖していた国境を再開すると発表しました。以来、強制送還への懸念が高まっています。北朝鮮は近年、国境警備を強化しており、フェンスや監視所を新設し、無許可出国を禁ずる法律を厳格に執行しています。
北朝鮮では、無許可出国は「民族への背信行為」という犯罪で、死刑または人権侵害をもたらす強制労働キャンプへの抑留によって処罰されます。この脅威にさらされているため、許可なく国外に出国または滞在する北朝鮮国民は「後発難民」(refugee sur place)、つまり、出国前の処遇や出国理由にかかわらず、出国後に難民となった者とみなされるべきなのです。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、今回10月9日以外にも、中国当局が8月29日に80人、9月18日に40人、2021年7月に50人近くの北朝鮮国民を強制送還したことを確認しています。また9月21日付の習近平国家主席宛共同書簡で、多数の団体と共に中国に強制送還の停止を求めています。
中国政府は通常、非正規滞在の北朝鮮国民を違法な「経済移民」とし、亡命や再定住を認めず、1986年の二国間国境議定書に基づき北朝鮮に強制送還しています。
しかし、中国は国連難民条約と拷問等禁止条約の締約国であり、迫害や拷問の真の危険がある者を強制帰還してはなりません。北朝鮮における人権に関する国連調査委員会は2013年、強制送還に関与した職員は人道に対する罪を教唆した罪で刑事責任を問われる恐れがあると、中国政府に警告しています。
各国政府は中国の今回の強制送還を非難し、今後の強制送還の中止を求めるべきです。中国政府は、国連当局に拘束中の北朝鮮国民との面会を認めるとともに、北朝鮮国民に難民資格を付与するか、韓国など第3国への安全な通行を認めるべきです。