(ニューヨーク)米国など複数の国が、外国人収容の代替(オルタナティブな)措置として試行しているパイロットプログラムは、より人道的で権利を尊重するアプローチのモデルとなる。ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表した報告書でこう述べた。
今回の報告書『収容措置の解体:外国人収容への代替策を模索する国際社会』(全94ページ)は、ブルガリア、キプロス、スペイン、英国、カナダ、米国の計6カ国での収容代替策を調査したものだ。ヒューマン・ライツ・ウォッチによると、ケースマネージメントサービスなどの収容代替策は、外国人の権利を守りつつ、政府による入管ルールの執行という利益に有効に寄与しうるとともに、他にも様々なメリットをもたらす。
ヒューマン・ライツ・ウォッチ難民・移住者権利局サンドラー・フェローのジョルダナ・サイナーは、「在留資格がないという理由だけで外国人を収容することは、有害であるだけでなく、費用もかさみ、抑止効果もない」と指摘した。「各国政府は、暴力などの不公正な状況から逃れてきた外国人にペナルティを課すのではなく、そうした人びとの権利を守り、法的支援、精神面でのサポート、住居などの重要なサービスを提供すべきだ」。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、この6ヵ国の代替プログラムに参加する27人のほか、サービス提供者、ソーシャルワーカー、弁護士、市民社会関係者にインタビューを行った。
今回の調査結果を受けて、各国政府は、外国人を収容するのではなく、法的支援へのアクセスをはじめ、住居や雇用といった基本ニーズを確保するガイダンスなど、ホリスティック(全包括的)なサービスを提供する地域社会でのケースマネジメントプログラムを導入すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。侵襲性の低い代替プログラムが存在することを踏まえ、足首にセンサーをつける「アンクルモニター」など、継続的に位置情報を追跡する装置の使用は禁止すべきである。
ヒューマン・ライツ・ウォッチの調べによると、代替プログラムは費用対効果が高いとともに、入国管理ルール執行の目的も満たしている。米国のファミリーケースマネジメントプログラムでは、移民関税執行局(ICE)がコミュニティベース組織(CBO)と下請け契約を結び、食事、衣類、医療、その他サービスの紹介などを、1家族1日あたり約38ドルで提供していたが、収容の場合は1日319ドルだった。当局によるチェックインの遵守率は99.4%だった。こうした成果にもかかわらず、トランプ政権はこのプログラムを終了させた。
権利尊重型のケースマネジメントプログラムはヨーロッパ各国で成果を出している。監視(サーベイランス)ベースの収容代替策が一部の国では広く利用されているが、必然性は皆無に近い。ブルガリア、キプロス、ポーランドの3ヵ国は、2017年にケースマネジメントプログラムの試行を相次いで開始した。実施2年後の評価では、プログラムの参加者の86%が入管と引き続き連絡を取り合っていた。
英国とスペインでも有望な代替モデルが実施されている。スペインでは、一部の受け入れセンターで、非正規移住者を対象に、住居、現金給付、スペイン語クラスの利用、基本的なスキルトレーニングなどの支援を行っている。英国では、コミュニティベースプログラムが、刑事犯罪で有罪判決を受け、長期収容に直面している移民へのサービスを提供している。
米国の移民局は、収容されていた人びとを釈放する際、しばしば足首に監視装置をつける。しかし、この装置は身体的・心理的な苦痛を引き起こすとともに、前科者であるという印象を与えることもあって、被装着者にスティグマを負わせる。そのため、例えば就労が難しくなっている。
メキシコ出身の男性(39)は、「私に[アンクルモニターが]ついているのを見た人は、二度と私に近づかないでしょう」と述べた。「誰かがこの装置を切断してくれる日が来ないかと願っています。」
アンクルモニターを装着している人は、常時監視されることにもなり、収集されたデータを用いれば、個人やグループの動きを追跡できる。
カナダでは、音声起動型の監視技術が採用されている。他のシステムよりも一見侵襲性が低く、負担も少ないようだが、プライバシーや差別、信頼性の問題をはらんでいる。対象者は決められた日にある番号に電話をかけ、あらかじめ録音されたフレーズを繰り返さなければならないタイプのものだ。このプログラムでは、音声認証を用いて本人確認を行い、携帯電話を使用している場合は位置情報を収集する。音声技術を使ったシステムは柔軟性があり、ストレスを和らげもするが、データの収集・使用方法に関する有効な制限や手続面での歯止めがなければ、悪用される恐れがある。
「代替案は、収容よりも人道的なだけでなく、収容よりも低コストで入管ルール執行の目標を達成する点で効果的なこともわかっている」と、前出のサイナーは述べた。「すべての政府は、収容ではなくケースマネジメントの利用を拡大する政策を採用し、複雑な行政・司法制度の壁に直面し、きわめて脆弱な立場に置かれがちな人びとを支援をすべきである」。